ブエノス小僧のイラストブログ

興味があることを、ガサガサ、ゴソゴソ、画いたイラストといっしょに掲載します。

狙撃!(信長夜話・その82)

『信長夜話』を長いことサボっていた。
絵がうまく画けなかった。
このブログはイラストブログというくらいなので、記事と絵が揃わないと掲載できない(ボクはそう思っている)。
イラストブログの面倒臭いところだ。

前回の『信長夜話』の「落窪合戦」(元亀元年6月4日)に先立つこと元亀元年(1570)5月19日(新暦7月8日)、織田信長が鉄砲で狙撃された(なんと)!
史料に現れた日本史上最初の鉄砲による狙撃ではないだろうか?(文献に残っていないだけで、他にもあっただろうが)。
その標的が信長だったのだ。

普通、信長といえば鉄砲と言われる。
積極的に鉄砲を装備させたと言われる信長が、その鉄砲で暗殺されそうになった。
皮肉といえば皮肉、
わざわざ奇をてらう物語を作り上げなくても、史実(史実とされている)はまるで小説のようだ。


それはこんな事件だった。

元亀元年(1570)4月、浅井長政の離反に金ケ崎(越前)から京に退却した信長は、態勢を整えると5月13日永原城(滋賀県野洲市)に移り、しばらく滞在する。
信長は岐阜にもどるつもりだった。
信長上洛のとき、抵抗するも敗れ去った六角氏が浅井氏の離反に呼応、甲賀、伊賀の土豪を糾合して再び勢いをとりもどしていた。
朝山日乗(坊主)と村井貞勝(吏僚)が六角氏との調停をはかるが不調に終わる(『言継卿記』)。

安土~佐和山~米原~関ヶ原~大垣~岐阜の途中は、小谷の浅井氏の勢力圏だ。
当然、通してくれそうにない。
さらに、一揆が呼応し八風街道〔はっぷうかいどう、三重県桑名の富田六郷富田一色~同県菰野町八風の鈴鹿山脈の峠を越えて滋賀県愛知郡(えちぐん)に行く街道。〕を封鎖。

結局、千草越え〔三重県菰野(こもの)町千草から滋賀県永源寺町甲津畑に通じる。中世には、鈴鹿峠を避けてこの峠道が八風峠とともに最もよく利用された〕を選ぶ。
近江、日野の蒲生賢秀(あの氏郷の父)らが動いて、信長を援護した。道案内と護衛だろう。

zenjyubou24.jpg
<杉谷善住坊がイラストのようなマコ岩松〔2006年7月21日没、ハリウッドの日本人俳優。「砲艦サンパブロ」で助演男優賞(確か?)〕のような男であったかどうかはわからない。
善住坊には肖像画などはない。容姿はまったくわからない。>



その千草峠で5月19日(新暦7月8日)、杉谷善住坊(すぎたにぜんじゅぼう)という男に信長は狙撃される。
善住坊は六角承禎が雇った鉄砲の名人だという。
殺し屋に信長を狙わせるなど、六角承禎もヤルな!

弾は2発だったという。
信長の袖を撃ちぬいたとも、かすり傷をおわせたともいわれる。

射距離は十二、三間(22~24m)ほどだった。
火縄銃の有効射程は200m程度。
命中精度に関する2005年の記録(実験)では、ヒトを模した身長160cmの静止した的に対して、30mの距離で5発全てが胸部に命中、50mでも5発中4発が着弾したという(想像以上の命中精度だ)。

信長の隊列は歩くほどの速度でさしかかったと思う。
善住坊の腕をもってすれば(ボクは善住坊の腕前を知っているわけではないが)命中させるのは可能だったろう。
信長の強運をここでも見た。

sogeki214.jpg

nigeruotoko32.jpg
<5年前、暑い夏の日、千草峠に行ってみようとボクは出かけた。
三重県菰野町から千草峠をめざしたのだが、残念ながら通行止めだった。落石とか土砂崩れとかあったかもしれない。
険しい道を想像した。今だ千草峠を見ていない。
イラストではマントの信長だが、実際はマントは着用していなかっただろう。
信長の前をいく二騎の鎧武者も完全武装にしたが、それもあやしい。暑い季節だったのだから。>



すぐに護衛が善住坊を探しまわった。
しかし、善住坊は捕まることはなかった。

5月21日(新暦7月10日) 信長岐阜着(『信長公記』)


ボクはこの事件に野次馬的な興味がある。

<杉谷 善住坊とは何者か?>
鉄砲の名人ということになっている。
侍だろうか? 善住坊というくらいだから坊主(もしくは坊主くずれ)?猟師?賞金稼ぎ?雑賀衆(鈴木孫一で有名な)?
甲賀五十三家の一つである杉谷家の忍者とも、伊勢国菰野の杉谷城の城主という説もある。

狙撃の理由も六角氏からの依頼、信長への個人的な恨み、鉄砲名人としての腕試しなどなどなど。

ボクは「猟師」ではなかったか?と思っているのだが、「坊主くずれ」も捨てがたいな!
要はわからないのだ。謎の人物。
ただ、この事件で善住坊は歴史にクッキリと、そう、クッキリと名を残した。

<杉谷 善住坊はどんな鉄砲を使用したのか?>
標準型(130cm前後、弾丸は三~四匁)だったのだろうか?
それとも射程の長い、長銃身のものだったのだろうか?
弾丸はもっと殺傷力が強いものだったのではないか?
史料は答えていない。

「織田弾正忠こうづはたにて、鉄放4丁にて山中よりこれを撃つと・・・」と『言継卿記』にあるという。
『言継卿記』に従えば4丁の鉄砲を用意していた(ということだろう)ことになる。
ただ、『言継卿記』を記述した山科言継は聞き書きだろう。

<善住坊はいくつだったのか?>
鉄砲の名人というぐらいだから、経験をある程度つむ必要があるだろう。
また山野を駆け回る体力もいるだろう。
ボクは30代だと想像している。

<信長の護衛はどれくらいいたのか?>
襲撃を受けても、ひとまず持ちこたえるために千~二千はいたのではないだろうか?
もっと多いかもしれない?
信長の馬回りや蒲生賢秀の配下のもの、千草越えの経路の土豪などが護衛したのではないだろうか?
進路前方を偵察する斥候、その後ろに前衛、本体、後衛に分かれていたのだろう。

<善住坊は信長をどうやって見分けたのだろうか?>
人がすれ違うのがやっとの山道だったと想像している。
そこを千~二千の隊列が通過するわけだから、人馬が長々と続いた。
その中から「あれが弾正忠(信長)だな・・・」と見つけなければならないのだ。

善住坊は信長を見たことがあったかもしれない。
それとも、手助けした者のなかに信長を見た者がいたのかもしれない。
「鎧武者が二騎くるが、その後ろが弾正忠(信長)だ!」と・・・

<善住坊はひとりだったのか?>
善住坊が放ったのは2発だったという。
火縄銃は前込め銃で次発までに30秒程度かかる。
30秒もかかっていれば、標的(信長)は走り去ってしまうだろう。
まごまごしていると、逆に捕まるか打たれてしまう。

だから1発目を発砲してスグに2発目を撃った。
そのためには、スグに撃つことができるように準備した鉄砲を手渡す者がいたというのが自然だろう。
善住坊を手助けするものがいたのだ(アシスト、ボクはカタカナ語は嫌いだが、)。
すなわち狙撃は複数人で行われたと思う。



その後、善住坊は逃亡生活を送るが、激怒した信長の厳命で徹底した犯人探しが行われた。
その結果、近江国高島郡堀川村の阿弥陀寺に隠れていたところを、領主・磯野員昌に捕縛される。

織田家へ引き渡された後は岐阜へ送られ、菅屋長頼・祝重正によって尋問された後に、生きたまま首から下を土中に埋められ、竹製のノコギリ(切れ味が悪いから痛い!)で時間をかけて首を切断する鋸挽きの刑に処された。
絶命するまで苦痛が持続する残酷な刑だ。ボクだったら刑の名前を聞いただけで気絶する。

「名前不明ながら、ある仏僧が立ったまま生き埋めにされ小さなノコギリで首を切断された。・・・・この仏僧は書状でもってある1つの城を信長に敵対させようとしていた」フロイスの『日本史』の記載。

このとき、信長37才、送電線の鉄塔も看板もない、圧倒的な自然のなかでの出来事だった。



信頼がおけると言われている『信長公記』の記述(現代語訳)↓

5月19日、浅井長政は鯰江城(東近江市・愛東鯰江)に軍勢を入れ、同時に市原(旧永源寺町)に一揆を蜂起させて岐阜へ下る信長公の行く手を阻んだ。
これにより信長公は近江路を断念せざるをえなくなり、日野の蒲生賢秀・布施藤九郎・香津畑(旧永源寺町甲津畑)の菅六左衛門の尽力を得て経路を千草越え(近江から伊勢へ抜ける経路)に変更した。

 そこへ刺客が放たれた。六角承禎に雇われた杉谷善住坊という者であった。
杉谷は鉄砲を携えて千草山中の道筋に潜み、山道を通過する信長公の行列を待った。
やがて杉谷の前に行列が現れ、その中の信長公が十二、三間の距離(約22~24mほど)まで近付いたとき、杉谷の手から轟然と鉄砲が発射された。
しかし天道は信長公に味方した。玉はわずかに体をかすめただけで外れ、信長公は危地を脱したのであった。
5月21日、信長公は無事岐阜に帰りついた。

さらに・・・

 杉谷善住坊という鉄砲の名手がいた。
先年(元亀元年1570年)、信長公が千草峠を通行した際、六角承禎に依頼されて信長公をわずかに十二、三間の距離から鉄砲二玉で狙撃した者である。
このときは天運あって玉は信長公の身を少しかすめただけで終わり、信長公は虎口を逃れて無事岐阜へ帰り着くことができた。
 その後善住坊は鯰江香竹を頼って高島に隠居していたが、このほど磯野員昌に捕らえられて9月10日岐阜へ護送されてきた。

岐阜では菅谷長頼と祝弥三郎が奉行となって厳しい詮議をおこない、善住坊から千草山中での一件を余さず尋ね出した。
これにより善住坊は路傍に立て埋めにされ、通行人に首を鋸で引かれる鋸引きの刑に処された。

 信長公は復讐を果たし、年来の憤りを鎮めた。上下の満足はこれに過ぎたるものはなかった。









  1. 2015/07/17(金) 07:35:58|
  2. 信長夜話
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<夏空 | ホーム | 義眼(ジョーク)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://buenoskozo.blog72.fc2.com/tb.php/255-d6a44576
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)