ブエノス小僧のイラストブログ

興味があることを、ガサガサ、ゴソゴソ、画いたイラストといっしょに掲載します。

幻(その一)

「サマルカンドへ行ってきたよ」
千種駅近くのスターバックスで、友人が話はじめた。
どうりで最近、連絡がなかったわけだ。

サマルカンドといえば、かつてのシルクロードの要衝。
13世紀、モンゴル軍の攻撃を受け壊滅した、というのがボクのサマルカンドについての知識のほとんどだ。

友人は旅行が趣味だ。
定番の旅行先には飽きてしまって、普通は行かないようなところへ行くようになった。
おかげで、ボクは見知らぬ土地の話を楽しませてもらっているのだが・・・


彼は、そこでマジックを見た。
それがスゴかったという。

それはサマルカンドの町はずれだった。
「ウルマス・カジンカジン」という若いマジシャン。
東洋系の端正な顔だちだった。

マジシャンの後ろには大きな木が葉を茂らせていた。
その大きな木を消してみせるという。
夕暮れ時、その木は黒いシルエットになっていた。
暗さが増してきた。

「さあ!」と男はパン!と手を打った。
すると、後ろの大きな木のシルエットの黒が、すこし薄くなったような気がした。

間をおいて、もう一度、男は手を打った。
木のシルエットはさらに薄くなって、後ろの景色が透けて見えた。
人々は息をのんだ。

かすかに笑みをうかべると、男はもう一度、手を打った。

その大きな木は消えていた。
「おおーっ!」という驚きの声が原っぱにひろがった。

こんな話だった。


ボクは友人と別れて駅で電車を待っていた。
ウルマス・カジンカジン?
その名前をどこかで聞いたような気がした・・・・



「どうだ、酒の味は?」
「お前は酒が好きだときいておるが、どれほど飲むことができるのか?」
惟任日向守(明智光秀)は老人に声をかけた。

「・・・どれほど酒を飲むことができるのかは、計ったこともないので判りませぬ。
酔いがまわれば、飲むのをやめるばかりでございます・・・」
粗末な衣をまとった老人が答えた。

光秀はこの老人の噂をきいたことがあった。果心居士(かしんこじ)といった。

光秀は主君、織田信長を本能寺に襲殺したばかり、
大名や寺社、朝廷などの抱え込みに忙しい日々だった。

そんなおり、家臣が果心居士を下賀茂近くで見たという。
果心居士といえば、信長、松永久秀、三好長慶、・・・などにも目通りしていた。
一様に果心居士の技に驚いた、と光秀は耳にしていた。
興味があった。

光秀は果心居士を探し出し連れてくるように命じた。
そして、「丁重に饗応するように」とも付け加えた。


mituhideutage11.jpg


光秀の御前で、果心居士(かしんこじ)は大杯で、たて続けに酒をグビグビと喉を鳴らして飲んだ。
15杯ほどを飲んだ。
光秀や居並ぶ家臣たちは見事な飲みっぷりに驚いた。

「遠慮は無用ぞ、心いくまで飲むがよい!」と光秀。
老人は「ふ~~っ、いささか満足つかまつった。すこし酔いもうした。」

「ご厚意のお礼に、すこしくわしの技をお見せいたそう・・・」
「・・・さて、あの屏風をご覧くだされ。」
というと老人は屏風に手を上げた。

byoubutote13.jpg


その屏風には、遠くの山々を背景に静かな湖面が描かれていた。
湿った大気を感じさせる絵だった。

絵のはるか湖上には漁師の船が小さく描かれていた。それがかすかだが動いたように感じた。
一同は屏風絵を凝視した。

odorokusamurai22.jpg


その小船は確かに動いている。すべるように絵のなかを移動しているのがわかった。
「うぅ!」「えぇ!」と一同は目を見開いた。

船は船首をこちらに向けた。近づいてくる。
漁師の竿さす様がみえる。

byoubukurufune12.jpg

さらに船は近ずいてくる。
今まで静かだった湖面(屏風絵の)が波立ってきた。

小舟がすぐそこに見えるまで近づいてきた。

すると湖面が盛り上がるように、屏風から水があふれ出してきた。

水はあっという間に膝が浸かるほどまでになった。

さらに水は増え続け、腰のあたりまでになった。

あふれ出る水とともに漁師の船が屏風絵から漕ぎ出てきた。

byoubufunederu12.jpg


次回、「幻(その二)」に続く。







  1. 2016/07/26(火) 07:35:46|
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