ブエノス小僧のイラストブログ

興味があることを、ガサガサ、ゴソゴソ、画いたイラストといっしょに掲載します。

野村合戦二(信長夜話・その89)

今年も「桜の季節」をむかえることができそうだ。
若いころには、そんなことを思いもしなかった。
二か月もすれば初夏、六月がやってくる・・・



ということで、前回の「野村合戦一」からの続き・・・


有名な「姉川の戦」の実相はわかっているようでわからない?
実際に参加してもわからなかっただろう。

「姉川の戦」は徳川氏の呼び名だ。織田氏では地名の野村から「野村合戦」。
浅井氏では「辰鼻表合戦・たつがはなおもて」もしくは「野村合戦」。
朝倉氏では地名から「三田村合戦」と呼んだという。

「姉川の戦」はこうではなかったか?

野村合戦(織田対浅井)を中心に書いてみた。
ボクの想像だ。以下。



元亀元年(1570)六月二十七日夜、浅井勢と朝倉勢は横山城の後巻き(自軍の城を包囲している敵を外側から攻めること)
のため、姉川近くに移動、陣をしいた。


横山城を包囲している織田勢に幾人かの物見(偵察)から、つぎつぎと報告が入る。
「浅井勢がこちら向かっている。その数、一万ほど(戦う前の敵は大きくみえる)」と・・・


「おおっ、新九郎(浅井長政のこと)のやつ、やる気だな」(長政は信長の義弟)
信長は浅井長政は小谷から出撃してはこない、と思っていた。
七日前、小谷を包囲したときには長政は信長の挑発には乗ってこなかった。
浅井勢は織田勢より劣勢だ。平地での戦は浅井勢にとって不利だ。


元亀元年(1570)六月二十八日早朝

浅井勢六千は野村(地名)で織田勢一万五千と、
朝倉勢八千は三田村(地名)で徳川勢五千と、姉川を挟んで対峙することになった(兵数には異説あり)。

軍勢の戦闘員は全体の5割とも4割ともいわれる。それ以外は補給を担当する輜重隊(しちょう)などだ。
だとすれば、織田の戦闘員は七千、徳川は二千、浅井は四千、朝倉は四千、ということになる。

浅井を四千にしたのは地元だから、補給もしやすかったと想像した。
織田、徳川、朝倉は遠征だから輜重に従事するものが多かっただろう。
そうだとすれば、戦闘員の兵力差はあまりない。


浅井長政は朝倉氏からの援軍が来たこの時が、信長に戦いを挑む好機だとおもっていた。
朝倉は浅井と同盟関係にあるものの、いつも援軍を差し向けるという保証はない(援軍を差し向けるのにも負担がかかる)。
雪の季節や農業の繁忙期(兵のほとんどは農業従事者)には難しくなる。

前述したように織田と浅井の戦闘員の兵力差はそれほどはない。
浅井勢の士気は旺盛だ。
うまくいけば、織田勢を突き崩すことが出来るかもしれない?
そうなれば、横山城守備隊も織田勢の背後から戦闘に加わるだろう。
と長政は想像したのではないのか?

信長の首を上げることはできなくても、
織田勢に痛撃を与えることが出来れば、しばし信長は手を引くだろう。
その間に軍を整え、反信長勢力との協力体制を固めて、信長に対峙しようと長政は思った。


信長は横山城に対して美濃衆を抑えにおいて、
姉川の対岸の浅井勢に対するため、横山城を背にして陣を組み直した。
龍ケ鼻の近くが信長の本陣だったという。
「龍ケ鼻・たつがはな」とは横山城のある丘陵の先端の地名。「辰鼻」という表記もあるようだ。


<織田の布陣>
先頭から、
坂井政尚(2,000)、池田恒興(1,000)、木下藤吉郎(1,000)、柴田勝家(2,000)、森可成(2,000)、
佐久間信盛(2,000)、織田信長本隊(3,000)、丹羽長秀(不明)
横山城への備えとして氏家直元、安藤範俊などの美濃衆(合わして1000)

<浅井の布陣>
先頭から
磯野員正(1.000)、浅井政澄(1,000)、阿閉貞秀(1,000)、新庄直頼(500)、浅井長政本隊(3,000)
横山城守備として
大野木秀俊、三田村邦宏、野村直元、野村直次、(500)

<徳川の布陣>
先頭から
酒井忠次(1,000)、小笠原長忠(1,000)、石川数正(1,000)、徳川家康本隊(2,000)

<朝倉の布陣>
先頭から
朝倉景紀(2,000)、前波新八郎(2,000)、朝倉景健本隊(4,000)

各武将の布陣はこの説に従うことにする(他の説がみあたらなかったから)

浅井 6,500、朝倉 8,000、織田 15,000、徳川 5,000、ということになる(非戦闘員もふくむ)。
軍勢の正確な数は当時でもわからなかっただろう。兵数はボクが適当に割りふった。

anegawafukan22.jpg
<姉川を空から見たところ。上が北だ。
右手前の下の丘陵が「龍ケ鼻」。この近くに信長の本陣があったといわれる。
絵には入っていないが、下(南)に横山城があった。

絵の中ほどを左右(東西)にくねりながら流れるのが姉川。
絵の上部(北)に大依山(おおよりやま)。その左(西)に小谷。

「龍ケ鼻」から姉川の間に織田勢は数段の陣をしいたといわれている。
姉川では織田勢と浅井勢の先鋒が衝突している。

その上、姉川の北に浅井の各隊と長政本隊。

姉川を左(西)にたどると、徳川勢と朝倉勢がぶつかっている、ところとした。>



姉川は、川幅200m、彼我の距離800mぐらいではなかったか?
(現在は管理されて水量は少ない)

朝もやのなか、姉川の対岸に敵の前衛が見える。

いくつもの集団がみえる。
多くの旗指物が風に揺れている。
使番(つかいばん・伝令)が騎馬で走る。
移動する集団、武具がすれる音、馬のいななき、


野村(地名)では浅井勢(磯野員正隊、1000)から攻めかけたのだろう。

磯野隊(浅井)最前線の指揮官が激をとばす。

「いいか!尾張のへなちょこどもに浅井衆の力を見せてやれィ!」
「お前たちの行く末は、この戦場(いくさば)にある。褒美はのぞみしだいぞ!」
「うぉ~ヴぉ~うぉ~」と兵が答えた。
鬨の声だ。

前線の各隊ごとにあちこちで鬨の声があがる。
鬨の声は兵の士気を鼓舞する。そして敵への威圧でもある。

tokinokoe12.jpg
<イラストは鬨の声をあげる指揮官と長槍隊とした。
この部隊の指揮官は幾度も戦を経験したベテラン
長槍衆はムシロを背負っている。野宿のときなどに地面にしいた。

他方、鬨の声をあげず、シーンと沈黙する部隊もあっただろう。それも不気味だ。>



「前へーっ!」
磯野隊(浅井方)の長柄槍衆が前進、渡河をはじめる。
声はかき消されることがあるから、大太鼓(押し太鼓)を叩いたのかもしれない。
「ドーン、ドーン、ドーン、」は前へ。
「ドンドンドンドン」は引け、の合図。

最前列には、敵の鉄砲や弓矢を防ぐため、楯をもった足軽が並ぶ。
その後ろに長柄槍衆、三段の横陣、兵どうしの間隔は狭い。槍は肩に担いでいる。

川の浅いところを足元を確かめながら渡る。
川の音、はためく大小の旗、鎧や武具がすれる音、兵の息遣い・・・

ある槍衆は腰の竹製の水筒に手をやった。
喉がカラカラに渇くのだ。


槍衆の背後の指揮官が大声を上げる。「いいか!押しまくれ!下がるものは斬る!」
何人もの甲冑武者が腰のものを抜く。槍足軽への脅しだ。
ドラマにある光景だが・・・

戦場では、恐ろしさと興奮が入り混じった感情が支配する。
普通、道で野犬にであっても怖さをおぼえる。
ましてや敵は武装した人間だ。怖くないわけがない。

イギリス陸軍は、軍曹を恐ろしい上官として兵の意識にに刷り込んだという
敵と対峙したとき、後ろでスゴイ顔で睨みつけている上官の軍曹より、前にいる敵兵のほうがマシ、
と思わせるためだという。以前、そんな記事を読んだ覚えがある。

おそらく本当だろう。西欧の軍隊を手本とした旧日本軍にも同じことがあったのだろう。
それが旧軍の新兵イジメに影響したのではないだろうか?とボクは想像している。

脱線した。
怖じ気づかないよう指揮官が兵を脅したのではないだろうか?
一人の怖じ気が全体に伝わり、崩れることを恐れたのだ。


映画やテレビの合戦シーンというと、必ず兵が走るが、そんなことはなかったのでは?
走っていては、敵とやり合う前に息が上がって戦えない。
甲冑武者の装備は20kg~30kgだった。
足軽具足は5kg+武具+携帯食糧など=10kg~15kgぐらい?だったと想像する。

走る必要もないのに走ったりはしない。歩く速度で押していく。
敵兵とやり合うときに力を出す(出させる)のが自然だろう。


渡河してくる磯野隊(浅井)の長槍衆が川の中ほどを過ぎたころだった。
対岸の藪や竹束などの遮蔽物の陰から、連続した銃声、閃光と煙があがる。
坂井隊(織田)の鉄砲隊が撃ちかけた。

想像を超えた数の鉄砲の射撃だったのではないだろうか?
のけぞる兵、腕をおさえてうずくまる兵、血しぶきをあげて倒れる兵、・・・

すると、浅井側の長柄槍隊の背後から、浅井の鉄砲隊がその発砲地点をめがけて応戦する。援護射撃だ。
前進する槍衆の背後から撃ちかけるのだから、味方の槍衆を誤射することもあっただろう。
戦はそういうものだ。第二次大戦でも味方に撃たれた例はいくつもある。

種子島(火縄銃)の最大射程500m、有効射程200m、殺傷射程80m、と想定した(異説あり)


磯野隊(浅井)の槍衆が鉄砲の射撃をうけて前進がとまった。坂井政尚(織田方)の槍衆が対岸に現れる。
織田の誇る、三間半長柄の槍衆だ。揃いの装備、旗指物、織田の足軽の装備は美しい。
織田は金持ちなのだ。

nagaeyari.jpg
<イラスト左が三間半長柄槍、約6m30cm。イラスト右が三間の長柄槍、約5m40cm。
槍をもつ足軽は1m60cmの身長とした。三間半長柄槍は身長の4倍だ。
三間柄が一般的だった。信長は三間半柄を長槍隊に装備させたという。
「弱兵は接近戦を嫌うので長い槍を装備させた」という説がある>



最前線の部隊は「御貸具足(足軽からみれば御借具足)」という武将が用意した具足を装備していた、と想像する。
最前線には体力があり、訓練をほどこした兵が配置されたとおもわれる。
揃いの装備は敵への威圧にもなる。

当時は武将も部隊も目立つことが必要だった。そのいでたちは派手で個性的だったろう。
「御貸具足」は無制限にあるわけではないので、二線級の部隊の装備は不揃いだったのではないだろうか?



当時の戦では、長柄槍隊こそが決戦部隊だった。その勝ち負けが戦に影響した。
鉄砲も有力な兵器と認められつつあったが、
長柄槍隊の前進を援護したり、敵の前進を阻止する役割をになった。

磯野隊(浅井)の槍衆が坂井隊(織田)の槍衆とぶつかる。
両軍とも、一斉に槍を振り下ろす。目標は敵の槍足軽の頭部だ。

この場合、長柄の織田槍衆のほうが有利だが、叩きつけたり振り上げたりするには体力がいる。
叩きつける回数では織田の長柄槍より短い浅井の槍のほうが勝ったのではないだろうか?


最前線の槍衆に疲れがみえる。
「二番、前へーっ!」
背後の新手の槍衆が入れ代わって前に出る。

新手の槍衆が敵に向かって、槍を叩きつける。
怒鳴り声、槍が叩きつけられる音、川の水が飛び散る、鎧のすれる音、
槍がしなって風をきる音、喚声、うめき声、血の匂い・・・

yaritai12.jpg
<槍衆の戦いは我慢くらべだ。
叩きあううちに、 横にいた足軽が陣笠を割られて倒れたり、引き気味になったりすると、
「押されているのではないのか?」という不安がはしる。
接戦では敵の勢いのほうが強いと感じるのが戦場心理だろう。

さらに数人が倒れたりすると、槍衆が崩れはじめる。
逃げ遅れれば命とりになる。
槍衆は集団であることが重要なのだ。>




しだいに坂井隊(織田)の槍衆が押されはじめる。
磯野隊(浅井)は姉川の対岸に届いた。渡河に成功した。
最前線の槍衆が崩れはじめると、後衛に伝染する。

坂井隊(織田)は後退してくる前衛の槍衆に代わって、後衛の槍衆が前に出る。

しかし、勢いにのる浅井の槍衆は坂井隊(織田)の後衛も押しかえす。
ついに織田の最前線、坂井隊が崩れはじめる。


先陣の磯野員正(かずまさ)隊の奮戦に、後に陣をしいていた浅井政澄隊(1,000)、阿閉貞秀隊(1,000)
も姉川を渡河して加わる。
坂井隊(織田)の後ろに布陣していた池田恒興隊(織田)は、後退してくる坂井隊の影響で陣形が乱れる。
浅井勢は押しに押した。勢いのあるうちに勝戦にもちこみたいのだ。
池田隊(織田)も後退しはじめる。

その池田隊(織田)の後ろにいたのは木下藤吉郎隊(織田)だった。使い番(伝令)が走る。
木下隊とその後ろの柴田勝家隊(織田)へは「敵(浅井)の前進をくいとめよ!」
後退した坂井隊と池田隊には「たて直して側面から攻めよ!、包み込め!」と、

木下隊(織田)と柴田隊(織田)は前進してきた浅井の諸隊とぶつかった。
浅井勢の前進阻止のため、鉄砲射撃を加えたいのだが、
後退してくる坂井隊(織田)、池田隊(織田)が混じっているから、むやみに射てない。


両軍の押したり引いたりが続く。
織田は、さらに森可成隊(織田)も加わる。ここが勝負どころだった。

見透しのきく平地での戦いは、兵力のまさる織田方が有利だ。
すこし疲れが見えはじめた浅井勢の前に、織田勢の新手が次々と現れる。

蹴散らされた坂井隊(織田)、池田隊(織田)も態勢を整えて、縦に伸びた浅井勢の側面を攻撃しはじめる。
浅井の先頭部隊が背後を織田勢から側面を攻撃されたことに気付く。不安がはしる。
もし包囲されれば孤立してしまう、と


浅井勢の前進が、ようやくにぶりはじめる。
すると前面の木下隊(織田)と柴田隊(織田)が勢いづく。
ジリっと浅井勢が後退しはじめる。

さらに浅井勢の後退がハッキリしてくる。
姉川の岸まで押しかえされる。

浅井の兵が姉川を渡って対岸へ向かうものが出てくる。
逃げ遅れれば、よってたかって、なぶり殺しにあうからだ。
群れから遅れたり、傷ついた兵は格好の獲物だ。


不安が浅井勢を包む。。
われ先に兵が姉川を渡って逃げる。
指揮官が「引くなぁ!もどせぇ!」と怒鳴っても、崩れたった兵を引き留めることは出来ない。
浅井勢は崩れた。

織田勢は追撃にうつった。
織田の鉄砲隊の発射音が響く。

次回に続く





谷口克広著「信長合戦全録」中公新書¥840+税
東郷隆・上田信 著「戦国武士の合戦心得」講談社文庫¥495+税
を参考にしました。






  1. 2017/04/04(火) 13:38:41|
  2. 信長夜話
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